こちらのニュースを読んでいる最中に競合って何だろうね、という思いが湧いてきたのでそのあたりを。
ちなみに、車好きを自認する私ですが、三菱車も日産車も所有したことはございません。20年位前に会社の所有者でデリカがあったので、それでよく十勝川沿いの砂利道を走ったりしていたことがあり、その時の印象は「フワフワして転びそうな車」という感じです。おつきあいはその程度です。
さて、仏の顔も三度まで*1 なんて身内から言われてしまう程に、品質管理やガバナンスに難があった自動車会社を規模拡大に資するという判断で ( 恐らく虎視眈々と狙いすましていたとは思いますが) 出資した今回の展開は、三菱グループ的には渡りに船、という部分も少なからずありそうです。
▰自動車業界の相関図
で、今回はこの資本参加の話では無く、日産自動車による三菱自動車救済合併の話をきっかけに「競合と提携」の現在形について考えてみた次第。
自動車業界も完成品メーカー同士の提携やら買収が複雑に深化していて、パッと見でこんな感じになってます。自動車の場合は完成車メーカーを頂点にしたサプライチェーンの裾野が広いので、実態としてはアドテクのカオスマップなんか比ではないくらいの複雑系があるのだろうと推測します。とはいえ、下図右側の各社なんかは、「味方の味方が敵」みたいなパスがいくつも見つかって面白い。
ソース :
No.73735 自動車業界相関図 2015 … - 7267 - ホンダ 2015/04/29〜2015/06/03 - 株式掲示板 - textream
▰ICT業界に置き換えると : Frenemy
こうした状況は筆者が勤務するITそういった事はICT業界でもよくみらます。時価総額ランキングでTop 10*2 に入るこの4社の関係性をごく簡単に模式化するとこんな感じかと。
(凡例)赤が競合関係で、青は依存・協業関係
私はマーケティング職なのでGoogle は必要な存在なのですが、クラウドサービスを担当している側からするとド競合という具合になります。こうした市場での企業同士の複雑な関係は往々にして社内の組織デザインにも反映されてしまいます。同じ部門内であるにも関わらず、ある企業に対しての立ち位置が180度逆ということで、社内の会話でたまーに気を遣ったりする事になるわけです。
みんな大人なので、別に互いにののしり合うような事はありませんが、時にマーケティング活動のFlexibility (柔軟性)とScalability(拡張性)に制約を生む事もあるのが悩ましいところです。
そんな複雑な関係性をFrenemy (フレネミー)という言い方をしています。定義としてはWikiのこちらが分かりやすいかと思います。
"Frenemy" (less commonly spelled "frienemy") is an oxymoron and a portmanteau of "friend" and "enemy" that can refer to either an enemy pretending to be a friend or someone who really is a friend but also a rival.
友達であるFriend と敵であるEnemy という単語を掛け合わせた新語 (造語)です。なかなか味のある単語です。
▰これからの競合関係の態様
各社の競合・提携関係が複雑化していく中で、合わせて確認しておきたいのが「パスタマー(Partner+Customer)」と「コーペティション(Cooperation+Competition) 」という関係です。これらは昨年あたりからフォーカスが俄然、高まっています。
これらの状態をなるべく簡単に定義してみると、
- パスタマー = 付加価値連鎖的
(売り手が買い手の付加価値連鎖の要素になる) - フレネミー = 相互補完的
( 売り手と買い手の関係が異なる事業局面で競合になる) - コーペティター = 市場開拓的
(部分競合だが市場開拓やカテゴリ創造において手を組む)
こんな感じかと。
今回の日産と三菱の件はコーペティター的。ICT業界ですと、マイクロソフトがクラウドサービスのAzureでRedHat Linuxと提携する、なんてケースが該当する。
パスタマー、フレネミーとコーペティターの決定的な違いは、コーペティターには場合により資本参加的なものが包含されるかもしれない点。資本参加の目的としては
・市場全体における支配力の強化
・両社の関係を一方が主体的、能動的にコントロールする
※株式持ち合いの場合は互いにコントロールする事になり抑止的、受動的。
といった効果を期待していると考えられ、その結果として競争そのものを低減していく事を狙っていると説明できるのではないだろうか。
ここで競争要因の低減とは、相手をDefeatする事で存在を消せたとしても、残った市場を自らの資本で再開拓、あるいは再浸透するよりは、既存の相手資産を有効利用した方が効率的、という経営行動を意味している。
異業種や新規市場への参入を自社で充足するか、あるいは買収するか、といったアプローチの違いと似ていると言える。具体例で言えばDellのEMC買収は、相手先ブランドのみならず、経営体制も維持するいわば連邦型(Federated)の買収で、市場全体におけるブレゼンス、ペネトレーション、自社が構築する付加価値連鎖を強化する上で、必ずしも自らのブランド名でロックインしようとしていない点も興味深い特徴として指摘できる。
こうした状態が示唆する事として
・競争の質的転換を見直す
・競争の基本である市場あるいは製品機能差別化ではこの状態をうまく説明出来ない
といった事を念頭におきながら市場、顧客、流通といったものを再構築する事が個々の産業内で発生しているように思えるのと、時にマーケティング担当者はそういう視点で自らのいる価値連鎖を見直してみるのも面白いと思うのです。
この競争戦略的な部分は非常に動的で、企業の相互行為がいろいろと垣間みえるので、また改めて整理してみたいところ。