LCCに転職してから間もなく丸2年。その間、ブログの更新がこれで2回目。前職の時はマメだに更新していたので、その頃は暇だったのか、今が忙しいのかはあまり考えないようにしたい。大事なのは続けるという意志を絶やさない事である、と自分を奮い立たせつつ久しぶりに書きたくなった。
個人的にはここ数年は都内のとある一財で企業派遣の学生さんのお勉強のお手伝いさせてもらうのにパワーを費やしていたけれど、今年に入って業務としてイベントで喋る機会がまた増えてきた。LCCの場合は講演料収入も大事な営業活動なので、拾える球は拾います。
前段の話
さて、今回は、こちらのイベントにて言いたい事を言ってきました。
f2ff.jp
スポンサー枠では無くて、ジェネラルセッションなので、ご参加された方に何かお持ち帰りをして頂きたい、という私のお節介と、自分の頭を整理したいという欲求が組み合わさって、サイトの最適化とか集客対策みたいな直結しそうな話では無くて、「売場」や「商圏」といった流通の基本要素をデジタルの世界でもちゃんと意識しませんか、という問題意識でタイトルつけてみました。こちらです。
自分の中で気になるワードを上手く散らしたつもりでしたが、大阪と東京の二か所で開催されましたがどちらも私のコマはガラガラで、空調が良く効いてました。聴講して頂いた方はお風邪などひかれてませんでしょうか?
「ネット&スマートフォン・コマース」というカンファレンスなのに、どのワードもタイトルに入れていないという時点で、自分の喋りたい事に的を絞ってる自分ちゃんぶりが遺憾なく発揮されているなぁ、と我ながら思います。
単純にこの講演タイトルと中身がほとんどの方にとって魅力的では無いのだろうな、と思いつつ、数少ない聴講者の方とはそれなりに意見交換出来たのは幸いでした。
このカンファレンスに協賛している訳でも無いので、腹が立つことも無く、セミナーの主目的から逸脱しない範囲でしゃべりたい事を喋るという気楽な感じでやらせて頂きました。そこで少し言及したのが「CRMを顧客囲い込むと呼ぶのは止めよう」なんですが、このポストはその補足ノートです。
1.思考停止と考えてしまう理由
CRM (Customer Relation Ship Management) って言葉は普通に訳せば「顧客関係管理」だと思いますが、なぜか日本では「顧客囲い込み」って訳されるというかオマケが枕詞のようについてくる。これ、昔から違和感がありまして、たぶん日本だけな気がしてます。(文献さらってないので感覚値です)
誰に聞けば良いかと思ったのですが、とりあえずティッカーシンボルがCRMの会社の言い分をまずは見てみたい。
中味引用(赤くしたのは筆者) ※スマホだと赤くないかも!
a technology for managing all your company’s relationships and interactions with customers and potential customers. The goal is simple: Improve business relationships. A CRM system helps companies stay connected to customers, streamline processes, and improve profitability.
When people talk about CRM, they are usually referring to a CRM system, a tool that helps with contact management, sales management, productivity, and more.
A CRM solution helps you focus on your organization’s relationships with individual people — including customers, service users, colleagues, or suppliers — throughout your lifecycle with them, including finding new customers, winning their business, and providing support and additional services throughout the relationship.
日本語で言う「囲い込み」ってこの「コンタクトマネジメント」という視点が色濃く出すぎて、「コンタクト管理!」→「しっかり個人を特定しないと!!」→「逃がさないようにするんだ!!!」という思考回路なのでは無いかと。そういう下地に加えて、顧客(=消費者)に選ばれるように仕組むあるゆる販売促進策が効果を出すためには「常に捕まえていないと不安」といった認識となり、「囲い込み」が無意識的に促進されているのだと考えます。
しかし、そこには上記の定義でも書かれている「すべての見込み顧客・顧客との関係性とやり取りをマネージする」部分が感じられません。マーケティング界隈におけるCRMに対する視点は、顧客DBからの眺めかカスタマーサポートからの眺めに分けられると思いますが、「囲い込み」は当然、顧客DBからの発想ですな。
さて、言葉の定義を糸口に難癖つけたところで、なんで思考停止と感じるかの理由はさしあたり次の二つ。
- 「囲い込む」という言葉の「おこがましさ」を疑わないこと (時代感覚の問題)
- ソーシャルメディアが当たり前の時代にもかかわらず、関係を作る起点は未だに製品のシリアル番号や購買内容に付帯するユニークなコードとメアド系or SNSアカウント、電話番号等を紐づけるところから進化してない事 (発想の問題)
2.私が考えているCRMの大事なところ
「囲い込む」に疑問を感じる事の理由は上記の二点が今のところは頭の中を占めているのだが、前者についてはそれ以上、説明出来ない。後者については、何かしらユニークな方法で顧客を特定していく事が間違っている訳では無いんだけど、字義に従えば「関係性をどうマネージするか」を問われているので、それでは永遠に横にカラムが増えていくしか方法は無いのかね? と思うわけです(別にテーブル分けても良いけど概念上の話)。
お客さんは生活している訳ですから、何らかの方法でこちらから歩み寄っていく方法が必要だろうと考えます。偉そうなことを言いつつ、「方法」は自分でも分かりませんが「方向」としては、下図のイメージ。
6-7年前くらいのセミナー用に拵えたんですが、今でもそんなに脳内風景は変わってない(それは自分が進化してない可能性もあるが)。「アンバサダー」とかつけてるのは今と昔では意味合いがずいぶん違ったのです、と言い訳しておきます。
この絵で言わんとしているのは、
- コールセンターや購買履歴など閉じて蓄積していくものは従来通り必須
- ただし、もう一つ開放型のコミュニティのような場が必要なのでは?
- そこではオーソライズされた個人やファンがやり取りを担いつつ
- 開放型として上書き共有されて自律的に発展していく
- その開放型の空間では企業もユーザも対等で、相互理解や相互発信がなされる
という事。
上図の緑色の開放型とある箱には過去の固定的な履歴だけではなく、ユーザが持つ記憶、記録、関心等が流動的に溜まっていく状態が想定される。そうする事で、「買う」か「買わないか」という1:0の関係だけでなく、もう少し多様なインタラクションがそこに蓄積されていく可能性がある(と信じたい)。
3.まとめ
今回のセミナーでは、「商圏」という言葉で、本稿で言うところの「CRMを形作るオープンな空間」というものを捉えなおしてみた感じ。
共通して言いたい事は、以下のような点。
- デジタル空間では、商圏を自由に設定できる点を活かして「歩み寄る」こと
- ターゲットや顧客が集まる空間を理解して、そこに近接する場を自ら創ること
- 顧客と直接の接点、出来ればダイレクトビジネスが望ましい
(モニターできるインタラクションの総量が多いという意味で)
4.蛇足
折角なので、共有可能な範囲に絞った資料はこちらに置いておきますので、本ポストのついでにサラサラと目を通していただくことも可能です。