本日の繊研に興味深いコラムがあったので、それをきっかけに調べてみた。
上記コラム、非常に短いので要約するもなにも無いのですが、箇条書きにするとこんな内容です。
短いコラムなのに知らない事だらけなので調べた事を記録しておこうと思う。
❖CETって何?
Central East Tokyo
記事に書かれた三か所をもとに想像するとこのあたりですかね。
知らないものに出会ったら本屋かGoogleというのが初動の基本という事で、叩いてみたらありました。
現時点で5年前の記事です。2010年当時は熱かったようです。
この記事で紹介されている CETというイベントについては、前身であるTDB-CE(東京デザイナーズブロック・セントラルイースト)を含めると2003年から続いて来たものらしく、一定の功績を果たしたものと思われます。
サイトを覗くと2003年以降2010年までの各年度のイベント内容がまだ残っていますが、年度ごとにWebサイトのデザインが変化しているので、デザイントレンドを辿る意味で楽しめます。
CETの目的は、
クロスジャンルの実験場として、大型開発の隙間で空洞化した都市空間の再生にチャレンジしてきました。2006年からは過去のイベントで試されてきた事例の日常化をテーマに取り組みを継続。アトリエ、ギャラリー、ショップ、オフィス等を誘致し、各々の発信を支援しながら、ユニークなエリアの創造を目指しています。
というものだそうです。
マンハッタンとかロンドンとかにありそうな感じのエリアとしての魅力づくりを目指した地域再生なのかな、という印象です。個人的には好きな部類です。
2010年でイベントが終わった理由は不明ですが、その2年後にはスカイツリー、2015年には近接する清澄白河にブルーボトルが開店するなど、取組みとしては正しい方向感だったのかなぁと思えるだけに、途絶えたのが惜しいです。
❖神田・日本橋・馬喰横山をひとくくりにする事
個人的に、IFI 財団法人ファッション産業人材育成機構 というところで業界の方々向けにマーケティングコミュニケーションに関する講座を持っている関係で、まさにこのエリアに含められる両国に行くことが多いのですが、その際に、「ブルーボトルがなんで清澄白河なのか意味が分からないのです」と言ったら諭された事を思い出しました。
どうやらこのエリアは元からそういうベクトルの街らしかった事がこのCETプロジェクトからも確認できます。個人として実感があるかどうかは別として。
私、生まれは横須賀、物心ついてからは横浜育ちで、社会に出てからは主に都内。あちこち転居してますが、基本は城南地区に15年近く住んでいるのですが、そのあたりの人間からすると、このCETエリアというのは結構なAway感があり、東の東京= 下町、もんじゃ、荒川、どじょう、錦糸町、ヤンキー、みたいな認知バイアスがかかっています。
日本橋 (室町あたりまで) は好きな街なので行きますが、それ以外のエリアに対してファッション的な臭いを感じとる事はありませんでした。なので、神田・日本橋・馬喰横山をひとくくりにしている時点でピンと来ない。
CETの対抗は西側の渋谷と新宿のようですが、こちらで例えると、新宿・渋谷・幡ヶ谷ぐらいの三角形で囲む当たりになるかと。ただ、この囲み方だと実際にはバラエティありすぎてなんだかなぁ、という気がします。そもそも渋谷と新宿を同列に並べてしまう事にも難がある。
❖エリアマーケティングと都市空間づくりを考える
という訳で、CETというイベントが終了した理由は後ろ向きなのか前向きなのかわかりませんので、まったく余計なお世話でしかありませんが、狭いようで広い東京の中で「エリア」を確立していくのであれば、その東京に住んでいる人のサイコグラフィックをしっかり掘り下げる事も必要だよな、という点を再認識した次第。
地方の友人が東京の新スポットを本やWebで調べていて、住んでいる人より詳しかったりする事を経験するのですが、街ってのは生活や仕事とか、そこで生きてく人達がいてこその発信力と求心力だと思うのですよ。点で触れあうような一見さんだけが集まる場所だとそれは単なる観光地って話で。
だから、先ずは広い東京の中でのプレゼンスが先で、そこをすっ飛ばして東京圏外の人に対してアピールしても、聞かれた都民が「何それ、知らない。。。」となってしまう事を極力 、避けられるように『都市空間づくり』していくことが必要なんじゃないかな、と全くの門外漢ながら思いましたわ。
❖経年優化という新しい考え方
で、話は元のコラムにある最後のトピックにある「経年優化」。古いテナントビルが目と鼻の先にある最新鋭の大型商業ビルと戦うに為に、発想を転換して産まれてきた考え方だと勝手に思っています。
不動産市場ってまだ全体的には古い商慣習が残っている業界だと感じていますが、こうした試みは面白いですね。街のコンセプトみたいなのが条例では無くて、コンセンサスとして共有されていて、そこに即した「リノベーション」ならそのまま活かしておきましょうというのは戦略として面白い。そういう重ね塗りしたような物件が増えていく事で街の空気が作られていくことはあると思うので。
パリやロンドンには整然と同じ高さの古い建物が並んだストリートが普通にあって、見た目は古いけど中は現代的、生活や仕事という日常が連綿と積み重なってきた空気みたいなものが街を作っていると感じる事がよくあります。
街づくりという観点では、少し不便だけどそういう「使えるものはメンテして使う」という事は素晴らしい事で、そこには美意識ってものが存在していると思う。翻って東京の街づくりに対する美意識って何だろうと思うと、少し寂しい。
最先端の利便性と緻密な交通網というのはすごい事だから誇れるのだけど、時々、ゆっくりと積み重ねたものを目にすると、ハーッってため息出ちゃうのよね。
無いものねだりなのかもしれないけどね。
※写真は筆者