軽めの仕上がり (はてな編)

Curiosity is the most powerful thing you own.

山岳救助に何を求めるか? Play at your own risk!

 花粉も気になりだすこの頃ですが、今朝は綺麗な冬晴れ。この時期、我が家のベランダからは白い帽子をかぶった富士山が見えるのですが、雪化粧の山を見るとスキーに行きたくなります。

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 私は15歳でスキーを始めてからその虜になりまして、大学卒業後はその延長で北海道に引っ越してリゾートホテルで5年ちょっと働くという、ある種の引きこもり的な状況から社会人をスタートしています。
 人口7000人程度の寒村("町"ではありましたが)に住んで、雪山で仕事と生活をしていると色々とあります。骨折とか靭帯切れた、みたいな話は日常茶飯事とまでいいませんが普通で、残念な事に命を落とされる事故にも遭遇しました。
 私自身も自分のスキー技術の未熟さを棚に上げてオフピステで調子に乗って樹にぶつかったり、転んで口の中をザックリ切って二週間くらいスープだけで生活したり、木の根元に埋まって身動き取れなくなってしまったり、という経験をしています。
 ここ数年は日常に追われてスキーに行けてませんが、この頃の経験が刷り込まているので、冬山は怖いし油断すると命にかかわる事故や怪我に直結する、という事が割と染み込んでいる方だと思っています。ゲレンデの中と外は別世界なのですが、最近はオフピステの開放や未圧雪のコース、パークの設置など、ゲレンデの多様性が増えてきて楽しくなっているのでスキー復活しようと思っていますが、上記の原則は普遍だと思ってます。

 

❖違和感ある裁判

 昨年のニュースです。北海道のニュースはつい反応してしまう訳ですが、これは隊員さんがかわいそうだわ。

www.asahi.com

 昨年3月の二審判決によると、道警の山岳遭難救助隊が積丹岳で男性を発見したが、運ぶ途中に隊員が男性を滑落させた。男性はその後、凍死した状態で発見された。

 大切なご子息を亡くされた方のご心痛はいかばかりかと思います。
 争点は救助の過程で隊員に過失があったかどうか、という事なんですけれど、ここで真摯に向き合わないといけないのは隊員の過失の問題では無くて、そもそも救助が必要な事態に陥ったのは何故ですか? という点です。

 一方では、男性の登山における判断のミスも死亡原因につながったとしている。それは、
①登山当日、天気が崩れる可能性が高いと認識しながら山頂まで登山を敢行した
②冬季の積丹岳は天候の変化が早いことを知っていながら、天気予報を十分確認しなかった
③ビバークに適さない山頂付近でビバークした
④下山方向を誤った
⑤破れやすいツェルトによるビバークをしたため低体温症に罹患した
⑥雪庇に近い場所でビバークしたため救助隊員が雪庇を踏み抜く過失を誘発した 
 などである。

 頼んで冬山に入った訳ではなくて自らの意志で入ってますからね。その事の意味を考えないといけません。

その中でやはりこの部分は同意。

山岳で遭難した者の救助なるものは、もとよりそれが国民の権利自由を制限するものでもなければ義務を課すのでもなく、国民に対してなんらかの行為を強制するものでもないから、警察が実施する場合には、それは前述した「任意活動」に他ならない。このように、山岳遭難救助活動は、専ら警察の任意すなわち裁量により行なわれるものである以上、出動の要請を受けた警察が、これに応じて出動しあるいは救助をしなければならない法的義務を、負うものではないのである。

原告のポイントは以下の通りのようです。

原告代理人の市川守弘弁護士は、今回の訴訟について、最終的には道警の山岳遭難救助体制の在り方を問うものであるが、今回の救助隊の活動には、次のような初歩的ミスがあると指摘した。
① 遭難者のビバークしている位置を知らせるGPSのデータを読み違え、約1時間半にわたり違う場所を捜索した。
② 雪庇を踏みぬくという極めて素人的な過ちを犯している。
③ 斜面でソリを留めおくときに、落ちないように確実に確保する措置をとらなかったうえ現場を離れた。
④ 遭難者を乗せたそりが目の前を滑り落ちて行くのを見ながら、その跡をたどって救助活動に向かわず、全員が引き上げてしまった。

 もちろん、レスキューを生業とする人がその技術の練度を高めていく事は必要な事だと思います。だからこそ、上記のような事を責任追及するのであれば、同様に冬山に入る事の意味、求められる技量というものを本人にも求めるべきです。

❖国会沙汰になっていた

 調べていて驚いたのですが、この事故に関して国会質問まで行われていたという。知らなかった。時の総理大臣である麻生太郎氏が答弁に応じている訳ですが、スノーボーダーが山に入って遭難、救助隊出動するも悪天候とトラブルも重なって結果死亡、という不幸ではあるけれど、国政の場で質疑する話題かしら、とも感じる次第。

 質問は平成21年(2009年)2月25日に提出されていますので、同年2月2日に死亡が確認された事を考慮すると事故直後と言って差し支えはなさそうです。質問者は鉢呂吉雄元衆議院議員。どちらかと言うと左巻きですので、国家権力たる警察が係る事案については舌鋒鋭くなりがちなのかしら、という邪推はありますが、どんな質問をしたか興味がある方はこちらの衆議院のページの検索窓で、"積丹岳における山岳遭難事故に関する質問主意書"で検索して頂けると確認可能です。

 ただ、読みにくいページなので、質問と回答をひとまとめにしたファイルを作成しましたので、興味のある方はこちらでもどうぞ。

 

 

❖基本は自己責任 Play at your own risk

 遊び場であるスキー場の安全を守るためにパトロールの人たちは日夜活動しているし、警察などの自治体も研鑽しているのは事実なのだけど、それに甘えて「何かあったらお前が悪い」という甘えの構造を許してはいけないと思います。自分でリスクを引き受けて遊ぶからこその楽しさである事をいまいちど確認した上でアウトドアスポーツするべし。
 これからスノースポーツを始める人、自分は分かっている、と思っている人が読んでおいた方がよいものを見繕ってみましたのでご参考までに。

 

 ここ数年スキーから遠ざかり、サーフィンに寄っている生活ですが、海でおぼれたときにライフセーバーさんの場合はどんな感じでコンセンサスづくりに励んでいるのかを参考に引用した上で、アウトドアスポーツってのは基本は自己責任で楽しむ、という原則が厳格に守られてほしいと思います。

www.jla.gr.jp

  でもってライフセービング協会さんの良い所は、ウォーターレジャーの目的に併せて講座を設けて普及啓蒙を促進しているところです。

アカデミー・教育 | 特定非営利活動法人日本ライフセービング協会

 ウィンタースポーツもこのような体系的なカリキュラムを作り、スキー、ボード、登山といった係り合い方の別を問わない知識と技術の普及が進むといいな、と思います。