やっぱりコカ・コーラはすげーな、って話。
記事を要約すると、こんな内容。
- これはUK (イギリス) の話
- 砂糖税(Sugary drinks tax)*1が導入される事に伴って、新しいレシピで糖分をカットした新ブランド、コカ・コーラゼロシュガーとしてリローンチ
- これに費やすマーケティング予算は£1000万 (約13億円)。過去10年で最高。
- 予算配分として「デジタル予算」という形では切り出していない。
- キャンペーンのコンテンツは内製せずに代理店依存
- 原点回帰的にデジタルクーポンに回帰している。
これを読んで、どう凄みを感じたかというと主に以下の3点。
- 潜在的に見え隠れしている問題点から目をそらさずに手を入れる所
- 商品そのものに革新はほとんど無い事を知っているように見える所
- 絶対的な金額の問題では無い所
❖潜在的に見え隠れしている問題点から目をそらさずに手を入れる所
これは 、メディアプランを作る時に、手順或はお作法として「ATL/BTL」や「デジタル/オフライン」といった線引きを半ば無自覚にやってしまうものなのですが、このケースでは、そこは取っ払って、最適と考えられるプランにゼロベースで練っていくことが出来るところ。
多くのマーケティング担当者が予算の何割かをデジタルチャンネルに向けるなか、ブリテイン氏はその効果について疑問を抱いている。ブリテイン氏は「デジタルをビジネス戦略やコミュニケーションアプローチ全般と切り離して考えていては、結局[あちらとこちら]の状態に陥ってしまう」と指摘。
の発言は100%同意。こうした分類は、手段でしか無く、手段の分類を優先した瞬間に、そもそものマーケティングコミュニケーションのゴールや、ビジネス戦略から乖離が始まってしまうという事だと言える。そして効果測定の段階で、「デジタルはどうか」、「オフラインはどうか」といった分断された状態に陥るきっかけを作ってしまう恐れがある事は、経験上でも軽視されがちな気がします。
❖商品そのものに革新はほとんど無い事を知っているように見える所
商品としては清涼飲料水という、これ以上は進化のしようが簡単には思いつかないカテゴリである。もちろん、味付け、色味、何かを付加したり減らしたり、といった加工は可能だけれど、「砂糖水」という本誌的な意味での進化は行きつくところまできていると言える。
だから、"What to deliver" では無くて"How to deliver" にフォーカスするしかないという割り切りの強さみたいなものをこの話の背景として感じました。レシピを変えて新発売ですので、トライアルしてもらってナンボである、というシンプルかつ絶対的なゴールを目指している、と。
その時に、もっとも効果的なHow to deliver を実現する為には、キャンペーンやクリエイティブは内製するより、都度、アウトソースした方がオプションは当然豊富になるという事でしょう。(ここは私の推測でしかありませんが)
そしてたどり着いたのがデジタルクーポンという原点回帰。駄目なマーケティングだと、やたら凝ったクリエイティブで担当者満足だけどアウトプット低い、みたいなパターンが起きてしまいそうですが、How to deliver にフォーカスしているので、トライアルさせるために有効な手段を最適なメディアで伝えていく事に集中している感が凄いな、と。
❖絶対的な金額の問題では無い所
もちろん、コカ・コーラといえばグローバル企業の雄ですので、資本規模で言えばダントツな存在である事は事実です。
ただし、こういう一般的にマーケティングに秀でた企業の例に接して大事な事は、『金ある企業はいいよなぁ』では無くて、模倣できるところを見出して学ぶ事だと思うのです。
キャンペーンごとに投資を最大限に活かす方法を検討している。
ほんと、これ。この一言に集約されているかと。
❖まとめ
特に「精度の高いブリーフ」というのは代理店側のアウトプットの筋の良さに直結するものなので、非常に大事。経験上、ブリーフの質と代理店の提案の質は比例すると思っています。
ただし、ブリーフも細かく書けば良いという訳では無いです。変な代理店さんだと書かれた通りのことだけまとめたような提案をしてくる事もあるので。そのあたりは経験とセンスがモノ言う世界かもしれませんが、組織としてそういう基礎体力を高めておくことはマネージャさんのお仕事ですね 。
という事で、一部繰り返しになりますが、まとめると。
- デジタルやオフラインといった媒体属性は一度忘れてプランすること
- 目的を明確にしてプランすること (今回の私の推測ではhow to deliver)
- 最大の成果を果たすためにアイデア出しは代理店をフル活用する。
- その為に精度の高いブリーフを行い、クオリティコントロールは徹底する
といったあたりでしょうか。
ついでに、肝心のUKのCoke TVを埋め込んどきます。