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ヤマダ電機の劇的な回復が気になったので調べた結果

 ヤマダ電機の2016年3月期決算の数字が目に付いたのでその件を少しだけ理解も兼ねて整理してみました。

 取り急ぎのコメントはNewsPicksにも記載済みですが、就活生レベルで調べてみましたのでご参考までに。

newspicks.com

◎市場のおさらい

 家電量販店の市場規模は主要15社の売上の積み上げによるとH25-26年は5兆5千億円程度*1で、エコポイント、地デジ、インバウンドといった政策的あるいはマクロ経済的な要因で業界全体が上下に振れる構造にある。その中でヤマダ電機が33.9%のシェアを持ち、2位のビックカメラ(14.4%)を引き離して独走気味。

決算短信からの読み取り

 その独自の社風、業界関係者の間ではよく語られる色々な意味でのキツさについてはここでは脇に置き、前期比3.3倍の純利益を叩き出すのはすごいと素直に考えたい。

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 決算短信から主な数字を引用すると上記の通り。原価と販管費をぎゅっと絞って売上減少分も含めて補う格好になっています。減収増益というやつですね。減収減益よりはるかに良いことではありますが、結局絞っているのが原価と販管費なので、成長過程の減収増益というよりは、一旦ダイエットしてみました、という格好になるので次の打ち手が課題としてまだ残りますね、という見方をしています。

 実際、上記記事でも

人事制度の改革や店舗閉鎖などを進めたことで収益性が向上した。記者会見した岡本潤専務は「構造改革の効果がやっと出てきた」と話した。 【時事通信社

という事ですのできっと激しく手を打ったのではないだろうかと想像できます。ただ、気になったので連結の従業員数を調べてみたら、実は増えているという状況でした。つまり店舗は閉鎖したけど、それに伴って人減らしをするのではなく、再配置したというのが実態の理解としては正しいのかもしれません。

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※2016年の従業員数はYahoo! Financeにある2016年5月9日時点のデータから引用しています。

 このグラフ、嫌らしく売上と従業員数の実数に補助線(線形近似)を引いてみました。いじわるというよりは単にトレンドを分かりやすくする為ですが、2014年をピークに減少した従業員数が増えています。それに対して総売上が微減傾向という流れが見えてきます。

 同じように売上と経常利益を並べてみるとこうなります。

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 つまり、単年度で利益は劇的な回復を前年比では果たしているが、従業員数の増加などを考慮すると構造改革は道半ばと見るのが正しそうです。

◎これからの収益源はどうするのか

 では、これからの成長の種としてどこに注力するのかというと、決算短信に気になるフレーズがありました。

ヤマダ電機グループは、3人の代表取締役体制(平成28年4月1日付)のもと、今後も日本最大級のネットワー ク・サービスのIoT企業として、「新規ビジネスの開発と推進」、「各種構造改革の強化・推進」、「既存ビジ ネスの強化」により、更なる成果につなげられるよう取り組み、挑戦を続けてまいります。(傍線筆者)

 ま、ここで「IoTというものはだなぁ」と説いても仕方がないので、IT家電的なニュアンスなのかな、と理解しておきます。

 このIoT発言はともかく、注目しておきたいの2016年4月28 日付で発信されているこちらの「定款一部変更に関するお知らせ 」です。主な追加と既存の定款の変更(傍線)としては、

  • カタログによる通信販売業
  • 金銭貸付業及び金銭の貸借の媒介・保証・集金並びに支払いの代行
  • 有価証券の投資・運用・売買・管理・仲介、クレジットカードの取扱いに関する業務及び総合リース業
  • 結婚相談及び冠婚葬祭に関する情報の提供並びに仲介、斡旋
  • 自動車、自転車、軽車両その他運搬車等の車両及びこれらの部品附属品等の販売、輸出入及び賃貸並びに整備業に関する業務
  • 介護保険法に基づく訪問介護事業通所介護事業、居宅介護支援事業、介護予防訪問介護事業、介護予防通所介護事業及び介護予防支援事業

といった具合です。

 なかなか味わい深いものがあります。高齢化社会で需要が期待できそうな事業はしっかりとカバーしつつ、利益を出しやすい金融サービスを取り込んでいくことで、楽天やセブン&アイといったあたりが金融サービスで成果を出しているのを貪欲に模倣していっているように見えます。成功しているところから学ぶのは正しいので、このあたりの臨機応変さはこの会社の強みとして素直に尊敬したいと思います。

 ただ、この定款変更からはあまりIoT臭はしませんので、そこんとろがどんな塩梅になっていくのかは引き続き見守りたいと思います。